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夏休みの来訪
「はーい……。」
あーめんどいっ。
母さんたち早く帰ってくればいいのに。
ため息をつきながら、僕はインターフォンのカメラを覗いた。
で、絶句する。
そこにいたのは、鼻眼鏡をかけて半纏(超ミニサイズ)を着込んだ、茶色のぶち模様の白いハムスターだったのだから。
えっと、どうしよう。
誰もいないのだが。
まさかこのちびっこいハムスターがインターフォンを押したとでも?
「あのー、すみません?」
とりあえず呼びかけてみると、ハムスターの口がカッと開いた。
「へい毎度!こちらご存じ、時売屋でござい!ご依頼はござるか?」
……。
え?
「こらーっ、返事をせい!時売屋、時売屋でござんす……ございます!なんや、誰もおらんのかいな。せっかく来てやったのに理不尽な。さっきまで話しておったちゅうに。ほい、こちら毎度おなじみ時売屋ー!」
……………………えーっ!!!!!!
おいマジかよ!
ハムスターが喋ってる!
しかも関西弁と侍語(?)が交ざってるし!
どうしよう?
でていいの!?
不審者の罠じゃないよね!?
「いるのはわかってんやで!とっとと出てこんかい!」
だんだん内容が脅迫っぽくなってきたんだけど!
「依頼はござらぬか?会わねば絶対に後悔なさるぞ?ふむふむ、これだけ頼み込んでも出てこないと。よし上等でござる、貴殿の恥ずかしい秘密を存分に暴露してくれよう!」
はあ!?
「ちょ、ちょっと待ってください!何ですか恥ずかしい秘密って!」
「む?なんや、ガキかいな。期待して損したわー。ほなさいなら。」
なんとあろうことか、ハムスターはくるりと踵を返して帰ろうとするではないか!
「待てい!」
咄嗟に、僕は外へ飛び出してしまった。
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