失恋。

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「よう。今さっき仕事が終わってさ。 失恋して寂しいだろうから、慰めに来てやった」 そう言いながら袋を見せてきた。 袋には、コンビニで買ったビールとおつまみなど 色々と入っていた。 ムードもへったくれもない物ばかりだ。 相変わらず女心が分かっていないわね……あんたは。 だが、それすら懐かしくて笑えてくる。 「もう、相変わらずムードも何もないわね。 いいわよ。中に入って」 せっかくだし元カレとやけ酒も悪くないかも……。 苦笑いしながらも理人を部屋の中に入れる。 2人で夜景の見える窓際のソファーに座りながら コンビニで買ったビールを開けた。 「理人。ルームサービスぐらい頼みなさいよ。 コンビニって……」 「えーだって、あれお客用だし。 それにルームサービスは、高いだろ? 俺は、これで十分。ほら。 ケーキも買っておいたから食おうぜ」 そう言い2個入りのショートケーキを見せてくる。 こんな素晴らしいホテルの部屋で コンビニのケーキって……。 何とも微妙な組合わせだろうか。 「本当にあんたは、ムードも何もないわね。 普通は、ここのホテルのケーキでしょう? しかもホールの」 「急に頼めるかよ。ホールなんて食べきれないし。 俺らは、これで十分だ。それにレストランだって せっかくパシィシェが作って用意したケーキを 一口も食べずに残していたくせに」 理人にビジッと言い返されて それ以上は、言葉が出なかった。 確かに食べきれずケーキを残したわ。 それよりもそんなところまで見ていたの? 恥ずかしいし余計に惨めな思いになった。 「し、仕方がないじゃない。 1人だと食べきれないし……悪かったわね」 ムスッと頬を膨れていると理人は、 徐にケーキの蓋を開けた。 そして、使い捨てのフォークを取り出すと ショートケーキにぶっ刺す。 一口サイズにすると私に差し出してきた。 「まぁ、文句を言わずに食ってみろ。 ここのパシィシェのケーキよりは、劣っているが なかなか旨いぞ。ほら、あーん」 そう言いながら私に食べさせようとしてきた。 ちょっ……ちょっと!?あーんって……。 彼の突然の行動に動揺する。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

139人が本棚に入れています
本棚に追加