失恋。

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「ちょっと…理人!?」 「いいから、いいから」 理人は、そう言いながら無理やり ケーキを私の口の中に押し込んできた。 うっ……うん?確かに甘くて美味しかった。 それに何だか心臓がドキドキと高鳴って熱い。 「なぁ?なかなか上手いだろ?」 ニカッと笑う姿は、あの頃の理人のままだった。 見たくれは、大人になってもやっていることは、 昔のままで何だかホッとする。 まるで学生の頃に戻ったみたいだ。 あの頃は……楽しかったな。 何で別れちゃったのだろうか……? 思い出すと懐かしくて涙が自然と溢れてくる。 「おい……?」 「ご、ごめん……今、引っ込めるから」 理人に情けない姿をこれ以上見せたくなった。 なのに……溢れる涙は止まらない。 すると理人は、立ち上がると私をギュッと 抱き締めてくれた。 「理人……!?」 「もう別れた男のことなんて忘れろよ!!」 そう言いながら……。えぇっ!? 急な行動にどうしたらいいか戸惑ってしまう。 何で、そんなことを言うの?今さら……。 「俺は……ずっと後悔していた。 何で別れたのだろうって……そりゃあ 自分の夢があったし、それに対して譲れない 気持ちだったけど……本心は、別れたくなかった。 ずっと、ずっと言い残していたんだ。 まだお前のこと好きなんだって」 私の方を見ると切なそうな表情でそう言ってきた。 その目は、私をジッと見て離さない。 ドキッと心臓が大きく高鳴る。 「でも……もう何年か前の話じゃない。 何を今さら……会いにも来なかったくせに」
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