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07:情勢はいつだって変化する
「悔しいけれど、江口くんの予想通りよ」
「……」
「寸分違わず、ね」
いずみは苦笑しつつ、話を続けていく。
「というか、そこまで把握していたなら、本当は分かっているよね? 私が江口くんの案に即座に乗った理由」
「……まあ、ね」
皮肉たっぷりに述べるいずみの発言に、朔は苦笑しつつも肯定する。
とは言え、その苦笑は見破られた事実が促したものではない。口調は皮肉たっぷりにも関わらず、童顔で小柄ないずみが凄んだところで愛らしさの方が勝つからという理由なのだが。
それはさておき、朔も本腰据えて語り始めることにする。
その結果がどう転ぶかは分からないが、勝負を仕掛けるのに【この場所】以上に有利な場所もまたないことを知っていたからだ。
「俺が提案した旧塩原御用邸新御座所で手を打った方が手っ取り早かったから、だろ? 小沢の提案に、俺が一つも首を縦に振らないから」
朔が述べる通り、いずみは手っ取り早く決めたいと思ったのは事実だ。
とは言え、それは打ち合わせをする段階から朔の様子がおかしかったからに他ならない。
いつもは丁々発止、盛り上がる議論が一向に白熱しない。それどころか、暖簾に腕押し、糠に釘……。いずみが行う数々の提案を面倒くさそうにスルーし、遅々として話がまとまらない。
そのような状況下で、ようやく引き出した朔の希望が旧塩原御用邸新御座所という明治建築史を間近に触れる好物件とあらば……特段反対する理由もまたないだろう。
「……そ、その通りです」
とは言え、まるで旧塩原御用邸新御座所に来たのは嫌々であると周りに誤解されかねない朔の誘導尋問はいかがなものか。そんなことを思いつつ、いずみはとりあえず肯定する。
きっと、ここで反論していては話が前に進まない。そういずみが確信しているからに他ならなかった。
「(とは言え、どうしてここまで私の方が気兼ねしなくてはいけないのかしら……?)」
何となく理不尽であるとは思いつつ、これから先の学生生活の平穏をゲットするため、ひとまず胸の奥底にしまい込んでおくことにした。
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