サンタがパパにキスをした

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 オートロックのマンションの玄関につき、インターホンを押すとモニターに映ったわたしを見て先生もびっくりしていた。事前に告知していたからよかったものの、サプライズ訪問だったら自動ドアを開けてもらえないとこだった。  恥をかいても、娘さんが喜んでくれれば報われると思っていたけれど、玄関を開けた瞬間の娘さんの表情は超絶微妙だった。 「メリークリスマス。わたしはサンタさんだよぉ~」  精一杯低い声を出して、一応言ってみた。  間違いなく不審者を見る目だった。  おじいさんなの? おばあさんなの? この人だれ!?  そんな顔だった。 「驚かせてごめんね。はじめまして。舞沢星奈って言います」  髭と帽子を脱ぎ、ちゃんと自己紹介した。  はじめが肝心なのに、思い切りスベッてしまった。 「ほら、みゆもちゃんと挨拶しなきゃ」  先生に促され、後ろに隠れていた娘さんが恐る恐る挨拶してくれた。 「はじめまして。広木みゆりです」 「みゆりちゃんか。可愛い名前だね。何歳ですか?」 「6歳」 「じゃあ、幼稚園の年長さんかな?」 「うん」  恥ずかしそうに頷くみゆりちゃんは、先生によく似ていた。  目がクリッとしてまつ毛がバサバサで、目ヂカラがある。頬がピンク色でぷっくりしてるのがとっても可愛い。初対面じゃなければ手でブニーってしたい。
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