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奥さんは、どうしてこんなに素敵な旦那さんと可愛い娘さんを捨ててしまったんだろう。
一度食事したぐらいで広木家のことを分かったような口をきくつもりはないけれど、先生は家事も育児も手慣れているし、奥さんに任せっきりにして何もしないタイプではなさそうだった。
みゆりちゃんも心はズタズタに傷ついているんだろうに、そんな素振りは一切見せず、わたしが接した限りでは明るく素直な優しい女の子だった。
もし、わたしが奥さんだったら……ママだったら……バカみたいなことが頭を過った。
不思議で仕方がないのだけれど、初めて来た感じがしなくて、とっても居心地がよかった。
ずっとここにいたいなぁ。
帰りたくないなぁなんて思ってしまう。
もちろん、そんなわけにはいかないのですがね。
パーティーが終わり、そろそろ帰らないとって先生と話していたら、みゆりちゃんが言った。
「ねえ、お姉ちゃん。今日はみゆのお家にお泊りして」
第一印象は最悪だと思ったけれど、お泊りしてなんて言われたら嘘でも嬉しい。
「みゆ、ワガママ言っちゃいけないよ。そんなこと言ったらお姉さん困るだろ」
先生が窘めると、みゆりちゃんはあからさまに悲しげな顔をした。
できることならお姉ちゃんだってお泊りしたいけど、パパが鉄壁の守りなんだよなぁ。
今にも泣きそうな顔をされたら、バイバイとは言いにくくなった。
「じゃあ、みゆりちゃんが寝るまで一緒にいてあげる」
「ホント!?」
みゆりちゃんの表情がパッと明るくなると、わたしまで明るい気持ちになった。
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