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「先生のお気持ちはよく分かりました。でも、さっきみゆりちゃんと約束したので、それだけは守らせて下さい。嘘をついて悲しませたくないので。わたしから、もう会えないってちゃんと言いたいです」
「……分かった。じゃあ、舞沢さんからみゆに伝えてやって下さい」
「はい。じゃあ、今から伝えてきますね」
わたしも楽しかっただけに、もうプライベートで先生やみゆりちゃんに会えないのかと思うと寂しかった。
でも、小さなみゆりちゃんが寂しい思いをするのは、やっぱり可哀想だとわたしも思う。
また会いたい気持ちはもちろんあるけれど、今は心を鬼にして……。
「あ、お姉ちゃん。よかったぁ。もう帰っちゃったのかと思った」
部屋に入ると、ベッドにいたみゆりちゃんが起き上がった。
「帰らないよ。今日はみゆりちゃんが寝るまで一緒にいるって約束したからね」
今まで生きてきて、子どもに懐かれたことはなかったけれど、どうやらみゆりちゃんはわたしに懐いてくれているらしい。にっこりと微笑みかけられると、もう会えないんだよって伝えるのがイヤになる。
「今日はすっごく楽しかったなぁ。みゆ、今日はお姉ちゃんと一緒に寝たかったのにな」
「そっかぁ。ごめんね。お泊りできなくて」
どんどん言い出しにくい空気になっていく。
「お姉ちゃんは、パパの彼女じゃないの?」
「え? ち、違うよ」
イマドキの年中さんは”彼女”なんて言葉を知っているのかと、少々面食らってしまった。
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