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「そうだよ。でも、パパとお姉さんはまだ出会ったばっかりだし、まだ恋人でもないからってこんなことみゆに言っても分かんないだろうけど、とにかく結婚ってそんなに簡単にできるもんじゃないんだよ。パパにはみゆがいるし、お姉さん可哀想だろ」
「……みゆがいるとお姉ちゃん可哀想なの?」
今にも泣きそうな顔でみゆりちゃんが言った。
そりゃそう思っちゃうよね。
「だって、みゆは……」
「ううん。可哀想じゃないよ。お姉ちゃん、みゆりちゃんのこと大好きだもん」
厳しい現実を突きつけそうな先生の言葉を遮って言った。
「ホント? みゆもお姉ちゃん大好き」
嬉しそうに笑うと、みゆりちゃんはわたしにギュッとしがみついた。わたしもその場にしゃがむと、みゆりちゃんを抱きしめた。
自分は特別子どもが好きなタイプでもなかったはずなのに、不思議とみゆりちゃんが可愛くて、愛おしくて仕方がなかった。
どうしてそんな風に思えるのか、自分でも不思議だった。
「ねえ、先生。わたし、先生のことが好きです。みゆりちゃんのことも好きです。だから、結婚を前提にお付き合いしませんか?」
「え……? それ、本気で言ってるの?」
「冗談でこんなこと言えると思います? 三十一年生きてきた中で、今一番本気を出してます」
あまりの急展開に、先生は困惑していた。
「パパもちゃんとお返事しなきゃ。男の子でしょ」
手厳しいツッコミに思わず笑ってしまった。
「いや、それはそうなんだけど、軽はずみに返事できることじゃないし……」
「マジメですね、先生は。お付き合いしてダメだったらその時考えればいいんですよ。案外、わたしが運命の相手かもしれませんよ」
本当に運命の相手だったら、こんなに嬉しいことはないけれど。
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