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願いも虚しく、その後、お灸をしている間にいびきをかいて爆睡してしまった。
「相当、お疲れだったんですね」
起こされる時、先生が苦笑いしているのを見て、もうダメだとリアルに落ち込んだ。
体は嘘のように楽になったけれど、内心は恥ずかしくて堪らなかった。
二度目に訪れる時は少し勇気がいったけど、もう行きつけの整体院を変える気満々だった。
これからは、ひろき整体院一本にして通い詰めてやる!
言われた通りに、週に一度は施術をしてもらうことにした。
今までなら我慢していた痛みも我慢せず、何なら頭痛よ来い、めまいよ来いとさえ思うようになっていた。けれど、腕が良いのかひろき整体院に通うようになってから、少しずつ肩凝りが改善され始めていた。
先生は施術ももちろん上手だけど、悩みや愚痴を聞き出すのも上手で。
知らないうちに仕事の愚痴とかベラベラしゃべってしまって、帰る頃には身も心もスッキリできている。もちろん、患者さん全員に同じようにしているんだってことは分かる。
わたしは特別じゃない。
だけど、会う度に元気をもらえて、どんどん惹かれていった。
わたしももっと先生のことを知りたいと思った。
ある夜、わたしのすぐ後に若い女性が治療にやって来て、露骨に先生のことを狙っていそうなのを見て酷く焦った。
これはいかんと思い、勇気を出して食事に誘ってみた。
飛び出しそうな心臓を押さえながら久々に自分からアタックしてみたけれど、結果は無残なものだった。
というか、正直知りたくなかったということまで知ることになってしまった。
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