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「ごめんなさい。子どもがいるので夜家を空けるのはちょっと……」
えええええーっ!!!!! 子持ち!?
わたし目掛けて隕石が降ってきた気分だった
「せ、先生、結婚されてたんですね。すみません、知らなくて。てっきり独身だと思ってたから……」
そりゃ、こんないい男が独身なわけないよね……。
先生は三十代半ばだって言ってたし、人の肌に触れる仕事だから指輪をしていないだけで既婚者の可能性も充分にあった。
それなのに、浮かれて現実を見失っていた。
「まあ、独身は独身なんだけどね」
「え? でも、お子さんいらっしゃるんですよね?」
「うん。恥ずかしい話なんだけど、数年前に奥さんが娘を置いて浮気相手と逃げちゃったんだ。俺が仕事の間はシッターさんに見てもらってるんだけど、あんまり遅くなると娘が心配するから、食事に行ったり飲みに行ったりはしないことにしてるんだ。せっかく誘ってくれたのに、申し訳ない」
きちんと理由も言って断ってくれたのはいいんだけど……。
まさかバツイチの子持ちだったなんて……。
「ちょっと何よ、あんた! こんな時間に。お手入れの邪魔しないでって……どうしたの?」
泣きながら、気づいたらキャサリンの家の前に立って、インターホンを押していた。
出てきたキャサリンは可愛いピンクのパジャマを着て、ピンクのヘアバンドをして、顔にシートパックを貼っていた。
「キャサリン……うわーん」
さすがにその夜は泣いた。
キャサリンに慰めてもらいながら、思う存分泣いた。
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