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プロローグ
野毛山公園交番勤務の巡査長、坂上真二は夜食を採ろうと弁当箱の蓋を開けた。
卵焼きやニンジン、ブロッコリーなどのカラフルなおかずと、たらこふりかけでハートを描いたご飯が綺麗に詰められている。
妻、綾音の愛情を感じつつ、タコの形のウインナーを取ろうとした真二は、右手に持った白いプラスチックの箸を片方落とした。
スチール製の机に当たったそれは、カタッと乾いた音を立てる。
手が滑ったのではない。不意に訪れた客に驚いたのだ。
同僚はパトロールに出ており、冷房の効いた交番内に一人残っていた真二は、生ぬるい夜風を引き連れて引戸から入って来た訪問客を眺めながら、もう片方の箸をそっと弁当箱の上に置いた。
(・・・・・・え?)
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