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悟、高木の他、テコンドーの達人である管、銃剣術に長けている長沢、班長の柏木と副班長の貫井の6名は、SAT指揮班を統括する山岡隊長を待った。
事件の概要、並びに作戦の詳細が伝達されるはずだ。
右手奥にあるホワイトボードには野毛山動物園および周辺の地図が貼られ、その各所に赤や青や黄色のマグネットで印が打ってある。
数や位置関係から考えるに、青のマグネットは悟ら制圧班の面々を表しているようだ。
黄色は制圧班を援護するスナイパー班と推察できる。
そして赤いマグネット。これが敵の位置だろう。果たして敵とはどんな奴らなのか?
柏木と貫井がホワイトボードを見ながら話している。
「ターゲットの数が多いな」
「ええ」
赤いマグネットは全部で20個ある。
貫井は面長の顔に不釣合いな太い眉を触りながら何かを考えているようだ。
状況を分析し冷静な判断を下す能力は6名のうちで最も高い。柏木もその点を認めているのか、折りに触れ貫井に意見を求める。
「想定される最大数ということでしょう」
「だとしても、6名でどう立ち向かえというんだ?」
柏木は吐き捨てるように言った。悟より1つ年上の26歳である。思ったことを率直に口に出し、情熱をむき出しにして皆を引っ張ってゆくタイプである。
全身が鋼のように引き締まり、且つカモシカのような柔軟性を持っている。
「3名から4名に対して1名。なんとかいけますよ」
脇から口を挟んだのは管だ。彼の鋭い蹴り技で瞬時に4名を倒すことは可能だろう。
班で一番若い23歳の発言は常に前向きである。しかし相手が武装しているとなればそう簡単にはいかない。
「作戦はおそらく潜伏しながらの奇襲でしょう」
「まあ、そうなるだろうな」
6名の中でもっとも細身であるが、粘り強く淡々と訓練をこなす長沢の意見に、柏木が同意した。
そのときSAT指揮班の山岡隊長がテント内に入って来た。
突入服姿で脇に防弾ヘルメットを抱えている。下顎の発達した六角形の顔に落ち窪んだ目、眼光は猛禽類のように鋭い。
制服警官を1名引き連れてゆっくりと長机の向こう側に移動し、ヘルメットをその上に置く。悟らはヘルメット姿のまま最敬礼にて迎えた。
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