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第一章 不機嫌の理由
公立北都高等学校の生物教師・秋月 衛(あきづき まもる)は、3年2組の教室に入るや否や、違和感を覚えた。
あの生徒が、いない。
いつも授業中に何かをやらかしては、衛に小言を喰らうあの男子が。
「陽(ひなた)は、どうした」
教室全体を見廻し、誰に問うでもなく訊いてみた。
「朝は、いたよな」
「隠れて、また早弁してるんじゃないですか?」
「衛先生に見つかると、ヤバいから」
どっと、クラス中に笑い声が響いた。
やれやれと頭を一掻きすると、衛は教卓の上に授業の準備を始めた。
その後を追うように、生徒たちのテキストを開く音やノートをめくる音、文具のかちゃかちゃ鳴る音が続いた。
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