第一章 不機嫌の理由

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 この3年2組の副担任を務める衛は、生徒みんなを名前で呼ぶ。  そんな彼を生徒たちも慕って、苗字ではなく名前で『衛先生』と呼んでいた。  3月の卒業を間近に控え、生徒ほとんどの進路が決まっている。  単位や出席日数を規定通り満たした者は登校する必要がないため、ぼちぼちと新しい世界へ旅立つ準備を始めていた。  荷造りをしたり、自動車学校に通ったり。アルバイトを始めてみたり。  だが生徒はみな、生物の授業だけは受けに来る。  衛先生に、会いに来る。
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