第一章 不機嫌の理由

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 ソファに腰掛け、ぐるり落ち着いて見渡してみるかと近寄ると、思いがけずそこにはすでに先客がいた。  大きなソファに、丸くうずくまって寝ているその姿。  衛の気配に気がつくと、その少年はもそりと首だけこちらに向けて、不機嫌そうな声を小さく吐いた。 「あんた、誰」  何かに似ている、と衛は思った。  何か、とはすぐには掴めなかったが、それはおそらく嫌なものではないはずだ。
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