第一章 不機嫌の理由

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 明らかに自分より年下の10代。  着崩してはいるが、制服を身につけているとなるとこの学校の生徒だ。  正直、褒められた口のきき方でも態度でもなく、その身なりでもなかったが、なぜか衛の顔には微笑みが自然に浮かんた。 「私は、今度この学校で世話になる生物の教師だ」  ふぅん、と、眼をくるりとさせて彼を眺めたその生徒は、それだけでまたうずくまり瞼を閉じてしまった。  どうやら、昼寝の最中らしい。 「邪魔したな」  温室をじっくり見るのは、また今度だと、衛はきびすを返した。  そんな彼の去りゆく背中に、声がかかった。
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