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そんな回想をしている間にも辺りは暗闇へと近づきつつあった。
回想が一段落ついた私は確信する。
今日の朝は何も変わったことはなかったはず…。
そのあと、すぐに先生が入ってきて、出席をとって…。
更に回想を進めようとしたその時、後ろから人が近づいてくる気配がした。
まさか不審者!?
焦って振り向くと、そこにいたのは息を切らした一人の少年だった。
肩が大きく上下している。ここまで走ってきのだろうか。
普通なら遠ざかるところだが、私はその少年に見覚えがあったため恐る恐る近づいた。
そして彼は、息を整えるために下を向けていた顔を私に向けた。
「葉!」
見覚えがあるのも当然だった。
それは、16年来の幼馴染の姿だった。
「葵・・・、葵だよね・・・?」
葉は驚いた顔をしている。
「なに言ってるの?長年見てきた私の顔、忘れちゃった?」
私は急に安心した。ここがどこであれ、葉がいれば大丈夫だ。
彼は生まれた時から隣に住んでいた。
この16年間、ずっと一緒に過ごしてきた、家族のような存在。
「ねえ、葵・・・お前、どうしてここにいたんだよ・・・?」
「それがね、全然覚えてないの。」
葉は一瞬だけ悲しい顔して、そのあと、思い出したようにつぶやいた。
「・・・俺のことは覚えてるの?」
「あたりまえでしょ。16年も一緒にいたんだから。むしろ、もうすぐ17年だよ!あなたは大宮葉、私の幼馴染でしょ!!」
「・・・それだけ・・・。」
その小さな声が私は聞き取れず、「え?」と聞き返すと葉からは別の質問が帰ってきた。
「じゃあ今日は何の日?」
「今日は・・・なんか特別な日だっけ?」
その私の答えに葉はまた悲しい顔を一瞬だけ見せた。
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