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~気候獣(前編)~
「ふう~」悪いことは考えないようにする。
丁度その時マザー·ガーディアンのメンテナンスも終わったので機体に乗った。外の風がさらに強くなり雨も降ってきて何とも言えない不安がよぎると、
「大丈夫ですよ未来さん」
「チャイルド······同調さぁ、1回しかしてないし、不安なの、そのあとも気を失っちゃったしさ」
「成功してます――社長に変わります」
慰めてくれてる最中に目の前の画像から霞さんが映り、
「やり方を説明する」
「はい」
「まず台風に耐えろ、そうすればそこの地点が台風の目になるはずだ、そこに気候獣が現れる。ソイツを同調して止める、以上だ」
「分かりました······」
「随分弱々しい声だねえ」
その声は不安で2トーンくらい低かった。そんな私に、
「止めてもらってもいいんだよ?」
「むっ」
「お前に徹は釣り合わないからね~」
「お言葉ですが、止めません――認めて頂くまではっ」
不安な私にこんな時でも別れさせようとする霞さんの言葉で目が覚め、自分の強い徹への想いに溢れたの。
「ちっ、口答えする元気はあるみたいだな。まあ精々頑張ればいいさっ」
そう言い捨て通信が切れた。嫌われているけれど、気合いは入る。私がここで終わる訳にはいかない、この仕事を成功すれば、きっと霞さんも少しは振り向いてくれることを信じて······。
20分が経過した。海岸からは波飛沫、木々も荒れ強風を見ると、
「ねえチャイルド、そろそろでしょ?」
「はい、まもなく暴風域に達しますので、イメージして下さい」
「うん!」
イメージと同時に、エネルギー体の手脚を出して機体が立ち上がる。
その時風で、
「うわわっ!」
咄嗟にマザー·ガーディアンを前屈みにした。
「風強いわね」
それとこんな時に限って、
「未来さん、徹さんと愛さんからLINEが来ました。どういたしますか?」
「え~っ」
どうしてこうタイミングが悪い時にと思いながら、
「パスパスッ!」
「かしこまりました」
二人には悪いけど、今イメージが離れると手脚が消えてしまうので余裕がない······。
しばらくすると、
「弱くなってきたわね」
徐々に太陽の日が射しさっきまでの激しさが嘘のよう。
「未来さん」
その時、チャイルドが画像を映した。
「気候獣を見つけました」
その姿は犬の形をした雲で、目が雷みたいに光ってる。大きさは10トントラックと同じくらい、シミュレーションのネズミと違って、襲いかかってくれば雲っぽくても爪等で住宅に被害が出てしまう。海の周りを見渡している巨大な気候、犬。
「未来さん、海岸まで行きましょう」
道路を道なりに進んでいると、近くに水族館があるので被害を出さないために更に道なりに進むことにした。すると、気候犬がこちらに気付いて走ってくる。
「未来さん、来ます」
「ラッキーね」
と言いつつも冷や汗をかいていた。それでも、やってみせると自分に言い聞かせて構える。容赦なく向かってくる気候犬が飛びかかり、
「このおぉーっ!」
腕に噛み付こうとしてきて焦りながらもマザー·ガーディアンの右腕を前に向けたら、
噛みついたっ。
すかさず左手で“気候犬”を触ると······。
「社長っ、隅野さんがに気候獣に触れましたっ!」
「······いける、はずだっ」
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