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~報告 (後編)~
「今うちの会社でテストパイロットを探しているんだが、条件が難しくてね。しかし、これで丁度いい」
「絶対ダメだ、未来っ!」
「······私は良いです、でもお腹の子が」
「腹の子は大丈夫。今のあんたが良いのさ······」
「二人とも、ちょっと!」
「別に止めたきゃ止めてもかまわないがね」
「徹、心配させてごめん、でも私は大丈夫だから、ねっ」
必死に止めにはいる徹、それでも話は進み辛そうに目をつぶって膝をついてしまう。彼にもどうすればいいのか分からず、その姿を見た私自身も悪い気がして『ごめんなさい徹』と心の中で謝っていたの。
「ちょっと待ってな」
そう言って霞さんはいったん社長室を出ると、
「何であんな無茶なことを」
苦しそうな声で問い掛ける彼に、
「あなたと、一緒になりたいから、家族に······なりたいから」
それが私の嘘偽りない心の丈だった。
「未来······ごめんよ」
「ううん、徹の気持ち、わかってるから」
いつも優しい徹、こんな人だから私は頑張れるの。話していると不思議と不安もなくなっていく。
――霞さんが戻ってきて紙をテーブルに置いた。
「こいつは契約書だ。ここにサインすればもうあと戻りは出来ないよ」
「······分かりました」
契約書には『お腹の子どもの安全を保証する』と書いてある。気にしていた子供の心配も減り、そして私は契約書にサインをした。
「じゃあまず、医者に妊娠の状態を診てもらってから機体の説明だ······」
徹と二人で会社の保健室に行き医者に診てもらうことに。
「――妊娠朝初期ですね」
「やっぱり妊娠してるんだ」
「よかった」
自分のお腹に生命がと二人は先程と違い笑顔になる。
「それで何か症状はありませんか、例えば下腹部痛とか、吐き気とか······」
「未来、どうなの?」
「う~ん、今は特に······」
今は特に変化はない、でも医者の方がお薬を出すと言ってきたので、
「私、何ともないですが」
「今はホルモンバランスを崩さない薬が出来てるの。心体共に悪くしないためにね」
「そうですか、ありがとうございます。えっと~······」
「佐藤 生月です」
「生月先生」
こうして診察のあと毎日3回服用と書いてある薬を薬剤師の方に貰って社長室へと戻った······。
「終わったようだな、ついてきな」
腕組み待っていた霞さんに言われるがままついていく。
エレベーターに乗ると行き先は地下3階、着いた奥の方に立ち入り禁止の扉が、
「地下があったんだ」
開くとそこは広い工場のような場所だった。
「これが、あんたの相棒になる」
「機械、ロボット?」
「くっ」
一機だけ白く、途中なのか手と脚のないロボットがある。
「“マザー·ガーディアン”だ」
「マザー·ガーディアン······」
顔は女性っぽい、説明によると全長15メートル、重量30トンなんだけど私はどう見ても10メートルもない気がした。
「徹、知ってたの?」
「母さんから話だけはね。実物は初めてだよ」
徹と話ながらロボットを見ていると私はハッと一つ不安に思う。
「もしかして、私これで戦争する、とか?」
恐る恐る聞いてみると「そんなわけないだろ」とホッとする。
「じゃあ一体なにを······」
「“気候獣”、知ってるだろ」
「はい、森とか海などから出てくる獣みたいな――自然災害ですよね」
何故か50年前から発生したのがこの“気候獣”による自然災害でまだハッキリとしたことは分かっていない。
「そしてその“気候獣”をこのマシンで止める」
「とめる?」
霞さんは話しながらマザー·ガーディアンの胸のコックピットを開いて、
「入れ」
言われた通り入ると中は球体になっていて360度に画像が映り頭の上と足の下に機械が見えた。
そのとき突然明かりが付き機械の動く音がする。
「うわ、なに?」
驚くとコックピット内に女性の声で、
「こんにちは、未来さん」
「え、え? こんにちは」
「私は、未来さんをサポートする役目を担うAIの“チャイルド”といいます」
「あ、AIか~良かった、よろしくチャイルドさん」
「よろしく、未来さん」
AIのチャイルドは落ち着いた大人の女性の声なため安心する。今の時代はAIって当たり前だから慣れてるし助かるのよね。
次に操縦を教えられたけど私が機械を沢山いじるんじゃなくて私のイメージで動かすってことみたい。何か難しそうだけど、チャイルドもいるし大丈夫という気がしていた······。
一通り目をとおし三人で社長室に戻ると、
「お前に見せた通りだ、今ならまだ引き返す事を許してやる。子供を下ろす金も出してやるぞ」
恐らく早く私を諦めさせたいんだ、冷たい目のままの霞さん。
でも、
「私の気持ちは変わってません。やります!」
「ちっ、あとはこっちから連絡を寄越す。今日はこれで帰んな」
「はい、失礼しました」会社を退出した······。
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