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~あの雪の日(前編)~
――早めに帰って家でグッタリしているところにインターホンが鳴った。玄関を開けたら、
「ようっ」
「大地君」
元気な声でガッチリした体型の徹の親友、大地守君。
「大地君こんにちは」
「職場で貰った野菜だ、一人にはちと多いんでな。お裾分けしようかと――大丈夫か?」
「うん、ちょっと仕事でね」
「大変だな、んじゃ行くわっ」
「野菜ありがとう」
「おう、体に気を付けてなっ」
気を使い持ってきた野菜を渡してすぐ帰って行った大地君。
「今日は野菜炒めでもしようかな······」
それから17時半頃に徹は帰ってきたので今日の出来事を説明した。
「――同調って、そんなに疲れるのか」
「まさかここまで精神にくるなんて思わなかったわ」
「だからか~、守から未来が疲れてるってLINEが来てさっ」
「そう~、気を使わせちゃったわね」
そう言いながらキッチンに向かうと、
「今日はオレ作るよ」
「ありがとう。ねえ、大地君が野菜くれたから野菜炒めしない?」
「おっ、いいね~」
明後日が本番ということが今更ながら不安になってきていた······。
本番1日前、私は社長室に入ろうとしていた。
「失礼します」
「何だお前か、訓練は4日間と言ったはずだが、何しに来た」
「はい、そうなんですが、その――今日も使わせてもらえないかと······」
昨日の体調も良くなり少しでも不安を解消するためにお願いしに来たんだけど、
「フンッ、昨日は気絶したんだ、どうせ無理だろうけどね。好きにしな」
「ありがとうございます」
きつい言い方だけど、とにかく明日に備えて少しでも訓練しなくちゃ。
トレーニング室の扉を開くと、
「おや、未来さん、今日は訓練日ではないですが?」
「チャイルド、お義母さんに頼み込んで許可をもらったの」
「そうですか」
そして訓練を始めたけど、
「同調しないの?」
「はい、明日に備えて同調は控えましょう」
「え~、でも」
「前回であんなに疲弊したんです。万が一何か起これば、取り返しがつきません」
「······そうか~、そうよね」
下手すれば明日は同調出来なくなってしまう、その事を考えると止めておいた方がいいかもしれない。
「わかったわチャイルド」
なので普通のイメージトレーニングを始め、私は明日に向けて気を落ち着かせるのだった······。
――未来がトレーニング室に入る中、オレは母さんの説得しに向かっていた。
「母さん、入るよ」
「徹、またか」
「もう止めさせてくれ」
「奴が自分でやると言ったんだ。あとのことは自身の責任だろ」
「······明日、未来を出す気なのか」
「テストパイロットなんだ、当たり前だろう」
「未来はテストパロットになって一週間もたってないんだぞっ、無茶だっ!」
「そのわりには奴を止めないんだなあ、何でだ?」
オレはソファーに座り両手の指と指を絡め、
「······未来を信じてるから」
――それは、未来と付き合って4ヶ月くらいの12月。
「――という訳だから、すまないね徹」
「うん一人でも大丈夫だよ母さん。オレ、もうちょっとで高校卒業だよ」
「そうだった、じゃあね」
「うん、じゃあっ」
社長業は土日なんて関係ないといつも母さんは言っていて、今日土曜日は1日母さんは帰ってこない。
「隅野さん、今日家こない?」
なのでLINEで送るとすぐ、
「うれしい、行く行く」
オレは蝶都市の蝶々駅まで歩いて待つことにした。この頃未来は大村市で両親と暮らしていて大村駅から一時間弱で付く予定だった。
ところがこのとき蝶都で大雪に。
「まいったなあ、大雪かー」
電車が気になってLINEで、
「電車動く?」
「大丈夫みたい」
よかったと安心した。オレも大雪だけど駅に徒歩で30分で着くのでそこで電車がくるまで待つことに······。
だが時間になっても姿が見えないのでLINEに、
「電車無理?」
「うん、動いたらLINEする、もし駅にいるなら悪いから家に一旦帰ってて、ごめんね」
そこでLINEが終わり「ふう~、仕方ないか」と再び30分かけて家に戻ってLINEを待つことに······。
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