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~あの雪の日(後編)~
しかしいまだLINEはこず、来たのはお昼を過ぎて午後1時の3時間後のことだった。
「もういいかも」
「わかったよ」
また30分かけ蝶々駅に着くが、
「電車、動いてないけど······まさかっ!」
嫌な予感がしてLINE電話をする。
「もしもしっ、隅野さん!」
「もしもし」
声も息切れ、やっぱり、
「隅野さんっ、今どこっ!」
「あ、バレちゃった?」
「どこなのっ!」
「もう着くと思うんだけど――線路たどってるから」
線路が見えてるということは、自身も上りの線路方面に走った······。
するとそこに大雪の中、フードを被りザクザクと雪を踏みしめて歩いていたのは、
「隅野さん?」
「道長君、エヘヘッ来ちゃった」
「どうしてこんな······」
「会いたいから」
大雪で、しかも4時間かけて。
このあとすぐにお店で暖かい物を食べて自分の家でくつろいで貰った······。
――あの出来事は衝撃だった。大雪で辛かったはずなのに、手足も冷たく疲れてるはずなのに、彼女は笑顔で笑ったんだ。その笑顔でオレは改めて未来に、彼女に惚れ直した。
「だから未来は、何がなんでもやるよ。それをオレは信じる」
「フンッ」
「また来るよ」
オレは言いたいことを伝えて社長室を出た······。
「······どんなに思っても通じない事だってあるのさ······」
「――未来さん、終了にしましょう」
「ふ~、わかったわ」
こうして家に帰った後の夜、
「徹、あたし早めに眠るわ」
「どうして?」
「えっ······と、何となく~」
「うん、わかったよ、お休み」
「お休み〜」
「未来、明日どうか無事でいてくれ」
俺は眉間にシワを寄せ小声で彼女の無事を祈るしかなかった······。
「――緊張していますか?」
「······少し」
私は霞さんのスタッフとスカイカーで移動していた。それは会社に着いた時。
「おはようございます」
「······今日の事だが、早速スカイカーに乗って、ここから静岡の下田公園に行ってもらう。そこでマザー·ガーディアンに乗り待機、以上だ」
要件を言い社長室を出ようとした霞さんに、
「あの、今日は頑張りましょうね」
「······ああ」
やっぱり振り向いてはくれなかった。それでも私には、今日の事を徹や愛に話してないから絶対に成功させないと······。
色々考えていると静岡に着いた。空は雲に覆われ風は少し強い。私はスマホで下田公園について調べてみた。
「下田公園は花の名所で、毎年6月にあじさい祭りがあるのか~、来年くらい家族で行けたらいいな~」と妄想していたら、
「未来さん、こっちです」
「あ、は~い」
スタッフ12人位いて、その内8人の方はマザー·ガーディアンの組み立て、あとの4人の方はパソコンをしている。そして霞さんの姿も、
「あ······う~ん」
お義母さんと言えば怒られるし、でも何かないと思いつきで、
「······しゃ、社長」
私もテストパイロットということで社長に決めた。
「私は何をすればいいですか?」
「食事と薬」
「わかりました」
時間も11過ぎで昼食と思うと、
「未来さん、お食事はこちらです」
車内で食事を取りながらLINEが届いてないか確認して、薬を飲む······。
11時半に食事と薬を終えると車内でスーツに着替えた。
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