~始まり~

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~始まり~

 2070年、この時代に世界は50年前から気候変動が生み出した“気候獣(きこうじゅう)”という自然現象に悩まされていたの。  “気候獣”とは、森林や大地、海、雲などが大きな獣のような形になり人々を襲う自然災害。  この現状を打開するために政府や大企業などが“気候獣”対策に力をいれていたが、特にこれといった打開策が見いだせないでいた。  そんな中、とある会社の“マザー·プロジェクト”が動き出していたの······。  ――5年前の夏、高校最後の夏休みに私は18年いきてきて一番緊張していた。  それは大好きな道長(みちなが) (とおる)君に告白すること。  彼は高校に入学したばかりの時、茶色肌でいじめられていた私を助けてくれたの。その時から彼を意識するようになって······。  けどこれまで告白できずじまい、だから今日8月9日は蝶都市の蝶都祭りにあらかじめ彼を誘っておいたんだ、化粧をしっかりとして、着物をお母さんに手伝ってもらい、 「ふ~っ、よしっ、これでOK······あ~緊張する~、ダメだったらどうしよう~」  不安ばかりが頭によぎる。悔いは残したくない、けど〜、そんな事がぐるぐると頭をかすめながらお祭りへと向かった。  ――蝶都祭りは40年前からあって幸せを願う由緒正しいお祭りなんです。だから屋台などの所々に蝶々のマークが入った看板や旗もあり、毎年賑わってるの。  道長君の方に向かっていると、屋台のわたあめとか、お面とか、あとおでんも売ってる。そこで、 「あ、唐揚げ······」と、つい声が出てしまう。 「お~、いらっしゃい、いかがですか~?」  屋台のおじさんに勧められたけど、 「あはは······」私は苦笑いして去る。  ここは我慢がまん今は食べてる場合じゃない。でも美味しそうだったなぁ~、そう思った時スマホのバイブが鳴って、 「お~い、こっちこっち~」  手を振る彼が見えたんだけど着なれない着物なので仕方なく歩いていく。 「お待たせ、道長君」 「隅野(すみの)さん、僕も着いたばかりだよ」 「・・・き、着物どうかな、おしゃれしてみたんだけど~」 「似合ってるよ」 「えへ、お母さんに用意してもらったの!」  全体が薄紫色でハナミズキ柄の着物が似合うって言ってくれたお母さんに感謝かんしゃ。 「やっぱり女子はすごいな~、男子よりも力のいれようが違うね」 「ま、まあね」  そこじゃなくて、もうちょっと何か言ってほしかったけど、 「ねえ、僕唐揚げ食べていいかなあ、お腹空いちゃって、隅野さんは食べる?」 「うっうん、あたしも食べる」  さっき食べなくて良かったと思う私。一緒に唐揚げを食べて、音頭を見て、踊ってる人達に交ざって一緒に踊ったり、ヨーヨー釣りとか、金魚すくいとか、楽しい時間が過ぎていき······。  そろそろ蝶都祭りも終わりに、 「もうお祭りも終わりだね、帰ろうか」 「······ちょっと」 「え、なに?」 「ちょっと、いいかな」 「うん」人気のない場所まで歩いて、 「あ、あの······」 「隅野さん?」 「あたし······道長君のことが好き、なの」 「隅野さん······」 「高校卒業したら離れちゃう、そんなのヤダ······だから、付き合って下さい」  そう告白して私は頭を下げた······。  僅かな時間の沈黙、そして、 「······僕は······僕で良かったら······よろしく」 「えっ······ホント、ですか」 「うん、ホント!」  私は彼の手を両手で握って、 「わっ!」 「うれしい」 「すっ隅野さん、涙出てるよ」 「だって、断られたらって」 「はい、ハンカチ」 「ありがと」 「少し歩こうか」 「うん!」  このとき私は幸せな気持ちでいっぱいだった······。  これが私と徹の始まり·····。
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