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深い緑に包まれた森の奥に、暗い雰囲気の城が建っている。
古びた茶のレンガで造られた、築500年の廃墟の城。
満月を背景に、不気味にその影を落としている。
化け物屋敷という表現がピッタリだ。
「ふう、やっと着いたぜ。エル、もう寝ちまったかな?」
傾げた鉄の門を前に、愛車を止めた。クラクションを何度か鳴らす。
無人と思われた城の一部屋に、明かりがついた。
きっとエルだろう。
俺はフルフェイスのヘルメットを脱いでから、バイクに乗せていた荷物をほどき、背中にもかついでいた大きな袋を、地面に置いた。
「よいしょっと」
掛け声をかけ、袋をもう一度背負い直すと、俺は城に向かって歩き出した。
袋の中でもぞもぞと生き物が動いている。今夜の獲物の動物だ。
鍵の壊れた鉄の門を開け、俺は荒れた前庭を通り過ぎた。
草木が茂り放題に生え、うっそうとしている。
「年々荒れ果ててゆくなぁ…。一応エルが住んでるはずなんだが…あいつ手入れしてないな」
つぶやき、半分呆れながら、草木をかき分けるようにして玄関に向かった。
「ザヴィーーー!!」
玄関に着いたとき、少年の澄んだ声がして、扉が開かれた。
とたんに小柄な金髪の少年が待ちかねたように、俺の胸に飛び込んできた。
俺の創造主の少年ヴァンパイア・エルだ。
創造主ってのは、自分が選んだ人間の血を飲み、代わりに自分の血を与えて、ヴァンパイアに変えたヤツのこと。
400年前に27歳の人間だった俺をヴァンパイアに変えたのは、このちっちゃな金髪のクソガキで。それ以来、俺とエルには400年の付き合いがある。
エルは俺の創造主であり、ヴァンパイア仲間であり、世界で一番大事といってもいい相手だ。
…そんなことはあんまり言わないけど。
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