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「何だって? 何が気に入らないんだい? 金の箱の方がいいのかい? 指輪はダイヤ? ルビー? オイルは毎日すり込んで欲しいのかい? 僕は君の指を手放すなんてしないよ。可愛いザヴィ」
それを聞き、思わずぞぞぞと背筋が総毛だった。
思わずエルを振りほどき、自分の手で右手を隠す。
少年ヴァンパイアに向かい、牙をむいて怒った。
「俺の指を狙うのはやめろ! 殺すぞ!」
「殺せばいいー!! いいんだ、最愛のザヴィのためなら、僕の命くらいミジンコのようなものさ。殺せ。さぁ殺せー!」
エルは床につっぷしてさめざめと泣く。
俺は怒りのやりどころが無くなって、沈下した。
こんな奴に本気で怒るのも馬鹿馬鹿しい。
しかし普段はどんなに愛らしい姿をしていても、犠牲者を狩るときは獰猛な猛獣なのだから、始末に悪い。
ともかく、死体の指さえ集まれば、こいつは一年中ウキウキしている。陰鬱な性格の多いヴァンパイアの中で、こいつの明るさは天性のものだし希少だ。
犠牲者には悪いが、これもリサイクルだと思ってもらうしかない。
リサイクル。そうリサイクルなのだ。
こいつは一年に一度、あることのためだけに指を集めているのだ。
(お気に入りの指だけはしまっておくが)
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