ヴァンパイア・ホリデー★聖夜の猟奇はキラキラ★

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俺が暖炉の前にある、年代物のソファでくつろいでいるときだ。 明るいエルの声が、廊下から部屋に響いた。 「ザヴィ、準備が出来たよーー!」 呼ばれてダイニングルームに行くと、部屋にはにこにこと笑うエルがいた。 ろうそくを使うシャンデリアには、10本ほどの明かりがてんでバラバラに灯っている。 豪華なゴシックなテーブルは広く、いくつもの椅子が並んでいて、テーブルの上の燭台には、沢山の明かりが灯されている。 ただし火がついているのはろうそくではない。代わりに燃えているのは、犠牲者の指だ。 肉の焼ける匂いはしない。薬品に浸してあるせいだろう。ろうそくのようによく燃える。 指が、あっちにもこっちにも立てられて、部屋の中でゆらゆら燃えながら並んでいる。 「今年の明かりは気に入ってくれたかい?」 少し照れながら、無邪気そうにエルが微笑んでいる。ちょっと怖い。 よく見ると、部屋の隅に黒い木の棺があった。 中では大創造主のジジイが寝ているはずだ。 しかし、その棺の近くにも、小さな明かりがいくつも燃えていた。 「おいおい、ジジイに火がつく火がつく」 俺は慌てて、棺の側のいくつかの明かりをもみ消した。 さすがに叱ろうと思って、エルを振り返ったときだ。 エルは小首をかしげてにっこりと笑い、俺を見て頬を染めた。 「恋人と過ごすクリスマスというの格別だね…」 俺は別に普段と変わらない。 むしろちょっとしたホラーな夜だ。 ゴシックなダイニングテーブルにつき、椅子に座った。 うきうきしたエルが対面の席に座った。 「二人っきりのクリスマスなんて、初めてだよ」 俺を見つめながら、そう言って微笑む。 こいつは、ロマンチックパーティを演出したつもりなんだろうか。指の炎は、イルミネーションのつもりで…。 頭が痛くなった。 ヴァンパイアのセンスって、どこか狂ってる。思い切り。しかも本人の自覚なしに。 しかも矯正は無理そうなのだ…。
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