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晩餐会の幽霊
まるで幽霊でも見てしまったかのような様子の人々の緊張をほぐすかのように、英臣は一瞬驚いて、すぐに優しく微笑むと、
「真衣、こっちだよ。」
と手招きした。英臣のとなりに座ってお客さんの顔をみる。みんな、何か腑に落ちないようだ。これはどういうこと?わたしの方も不思議に感じることだらけだけど、こちらの世界から見ても、わたしには何か不思議なことがあるらしい。
それは何?わたしの何が不思議なんだろう?
不自然な沈黙の中、耐えきれないと言った感じで、ひとりの男が言った。
「英臣君、君は真衣さんが死んだと言った。そのお別れの会を開くと言うからやってきたんだ。
みんな喪服を着て、真衣さんを失ったきみを元気付けたいと思ったんだよ。しかし、その死んだはずの真衣さんがピンクのドレスを着て現れた。
いったいどうなってるんだ。
ふざけてるのか?僕は帰るよ。」
様子をうかがっていた他の客たちも堰を切ったように、帰り支度を始めた。
執事が客たちの馬車の手配を慌ててしている。
ある人は怒ったように、ある人は怯えたように、ある人は軽蔑したようにわたしのことをみると、馬車に乗り込み帰っていった。
みんなわたしのことを嫌いなのかなぁ。あっちの世界と一緒だな。やっぱり落ち込むよ。訳もわからず涙が出てきた。
ポンポンと優しく頭を撫でられて、顔を上げると、英臣が笑っている。
「真衣、泣かないで。真衣が帰って来て俺は嬉しいんだよ。」
わたしは訳もわからず、なんども頷いていた。
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