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英臣との思い出
色々考えてボンヤリしていると、
「真衣、疲れただろう。今日はゆっくりとお休み。誰がなんと言おうと真衣が帰って来てくれて嬉しいんだよ。ありがとう、真衣」
英臣はわたしをベッドまで運んでくれると優しくおろしてくれた。
「本当はもっと一緒にいたいけど、お父様に手紙を書かなくてはいけない。待っててね。」
心配そうにわたしの顔を覗き込むと、ひとつ頷いて帰っていった。
一人になると蛇尾川のことが気になってきた。どうしても夜の蛇尾川に行きたくなってハナに頼むと馬車を出してくれるという。遠慮なく馬車に乗せてもらって蛇尾川のほとりに赴いた。
夜の蛇尾川はきれいだった。夜の闇に浮かぶ白い石の川。
この川の中に立っていたらあっちの世界に戻れるのかな。と思っていたら景色が歪んできた。わたしは、あっちに戻りたいのかな?それともこっちの世界にいたいのかな。
まだ1日しかたってないけど、こっちの世界にいたいような気がしていて、不思議だ。
その理由は今日初めて会った英臣の存在かもしれない。会った途端に一目惚れって、そんな小説みたいなことあるんだね。
わたしは英臣のことが好きみたい
こっちの世界にいたいよ。
でもどんどん景色が薄れていく。こっちの世界にいたいのにやっぱり無理なのかな?
さよなら、英臣。人とのつながりは時間の長さだけでは測れないんだね。
意識が遠のく中、だれかに強く抱きしめられるのを感じた。
薄れゆく意識の中で、これだけは忘れたくなくて、噛みしめるように言葉にした。
「英臣、愛しています。ずっと一緒にいたい。」
わたしを抱きしめる腕の力が強すぎて、でも体の中が暖かくて、とても優しい気持ちになって眼を閉じた。
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