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君との瞬間
それは君だって
分かっていたのに
僕はいつも
言い出せないまま
それは僕だって
言えたなら
僕らは今でも
一緒にいれただろうか?
時は等しく
あまりに残酷にすぎていく
いつか
は
やがて
あの時になって
僕は僕のままではいられない
君が君のままではいられないように
………………
…………
……
「……これ、アンタが書いたんでしょ?」
知世は巧人のノートをめくると、いたずらっぽく笑った。
「な、勝手に見んなよ」
「いーじゃん、いーじゃん。いーい? 表現ってのはね、人に見せなきゃ、認められなきゃ意味がないのよ?」
「う、うっせーな。それは……そうだろうけど……相手ってのがあるんだよ。見せる相手ってのがな!」
「ふーん。でもね、表現者ってのはね、伝える相手を選ぶことなんてできない。いつだって選ばれる側なの。だからね、伝えたい人がいるのなら、その人に伝わるまで叫び続けるしかないの」
「お、おう。なんか……それっぽいこと言うじゃないかよ」
「ってことで~つづき見せて!」
「あ! 取んな! うまいこと言ってそれが目的なんだろ!」
「えっへへへへ~いーじゃん、いーじゃん」
――終わりは始まり、始まりは終わり。
まるで、恋人同士のように親しげに見える本間巧人と乃木知世。だが、ふたりの出会いはそれほど順調というわけではなかった。
物語の始まりは少し前に戻る……
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