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情けない声で訴える秋哉に、春一はふと苦笑いを漏らす。
「鈴音に言ってもらわなきゃ、俺は気づいてやれないんだよ」
どうやら怒っているのは秋哉にではなく、自分自身にのようだ。
「家ってのは家族みんなで作っていくものだろう。だれかひとりで負うものじゃないよ」
春一は、
「だから、俺みたいなのは致命的だ」
少しおどけたように言うが、それでやっと秋哉も思い出す。
春一が、ずっとひとりで抱え続けた、ひとりだけ血が繋がっていないという家族の秘密。
ある意味それが、昔の来生家をバラバラにした原因ともいえる。
少なくとも秋哉は、それを理由に家を出た。
春一を恨んでいるわけではない。
だけど秘密にされたことが、重荷を一緒に担がせてもらえなかったことが悔しかった。
「失いたくないなら全員で大切にしていくんだぞ」
春一が言うからこそ、身に染みる言葉。
家族は、けしてひとりで作るものではない。
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