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秋哉は、自分の思考が全部バレていて、いささか恥ずかしい思いだったが、でも約束通り、春一と鈴音は、潤が風呂からあがると、さっさと部屋に下がってくれた。
「たまには俺たちも、のんびりさせてくれ」
夏樹にみせつけるように鈴音の肩を抱きながら春一が言うものだから、夏樹も対抗心を燃やして、
「おー、ごゆっくりな。お姫さまは俺に任せとけ」
夏樹の腕に抱かれている潤を、誇らしげに見せつける。
さっきから眠いのだろう。
機嫌を悪くした潤が、
「イヤー、ナツキちゃんといるのー」
「ウルはナツキちゃんがいい」
と夏樹のプライドをくすぐる言葉を連発するから、春一があからさまに挑発してくるのも疑問に思わない。
まさか秋哉のプロポーズを成功させるための伏線、なんて微塵も考ることなく、潤を抱えて部屋に下がる。
『さすが娘だ。ナイスアシスト』
と秋哉などは感心したものが、心底悔しそうに唇を噛む春一を見ていると、本当にアシストなのかどうか、かなり怪しい。
そういえば以前鈴音が、
「潤っては、春さんと夏樹、どっちがパパなのかわかってないんじゃないかしら」
なんて、かわいそうなことを言っていたから、春一にとっては鈴音の肩を抱いたのも、挑発というより精一杯の強がりなのかもしれない。
実情を知らないカズエだけが、
「いいなぁ。鈴音さんと春さん、いつまでもラブラブで」
羨ましそうに呟いている。
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