秋哉 四回目の――

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カズエは、 「どうしたの、そんなに慌てちゃって。またお腹でもすいてきた? お蕎麦でもゆでようか」 いらないと断ってしまえば、次に訪れる沈黙が怖くて、秋哉は仕方なく、 「うん」 とうなずく。 春一が言った、 「間が悪いのは、俺に似たんだ秋哉」 の言葉が今さら頭に甦ってくる。 『なにも似るならそこじゃなくていいのに』 秋哉は恨めしくて仕方がない。 いつも泰然と落ち着いているところとか、統率力があるところとか、秋哉が目標としている春一の背中はいくらでもある。 だがひとつ、今日教えてもらったことがある。 「家ってのは家族みんなで作っていくものだろう。だれかひとりで負うものじゃないよ」 春一の後悔。 だから秋哉は申し出る。 「オレが作るよカズ」 「え?」 「カップメンでも良ければ、だけどな」 ずっと、自分だけで秘密を抱えていた春一は、それを黙っていたことが誤りだったと今では認めている。 春一にそう教えた中には秋哉だっていたはずなのに、なぜだか、ふと忘れてしまうのだ。 「失いたくないなら全員で大切にしていくんだぞ」 春一の言葉がなくても、ちゃんと大切にしていかなきゃいけない。 日々をおくる何気ない日常の中にこそ、大切なものは存在している。 カズエは、 「お正月なのにカップメンって……」 少し呆れたようだが、いつにない秋哉の真剣な顔に何かを感じたのか、 「……じゃあ、お願いしようかな」 椅子を引いて腰かけた。 「ああ、任せとけよ」 秋哉は言って、ヤカンを火にかける。
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