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「なぁ、せめてカズのご両親にあいさつに行く日ぐらい……」
秋哉はブツブツ言うが、
「だからそれは春一さんと夏樹さんのスケジュール調整してからだってば。アキの休みなんて、あって無いようなものじゃない」
カズエにそう言われてしまうとぐうの音も出ない。
国防という任務についている秋哉は、緊急時となれば長期休暇の申請も急に取り消しになってしまう。
約束しても叶うかどうかは怪しい。
一応、毎週末は休みだが、家から離れた基地に勤めている以上、土日にちょっと帰ってくる、というわけにもいかないのだ。
「だからお兄さんたちの都合がついたら、親も連れて、いずれこっちから宿舎にアキを訪ねて行くってば。親もアキの職場を見たいって言ってたしね」
秋哉の休みを期待するより、一家総出で訪ねた方が、確実に秋哉に会えるというわけだ。
それはそうなのだが、
「でもそれじゃあさー」
秋哉がグズグズいうのは、結婚が決まったとたん、カズエの気持ちが冷めてしまったような気がするからだ。
プロポーズした大晦日の夜から、カズエはずっと怒っている。
確かに、鈴音もいる春一の部屋に踏み込んでしまったのはマズかったと思うが、当人たちより怒ることはないだろうと思う。
それなのにカズエは、大事なご両親へのあいさつの日取りも決めさせてくれない。
これではプロポーズはすませたが、今度は結婚がいつになるかわかったもんじゃない。
なんだか秋哉ひとりで空回りしている気がして、ちょっと拗ねていた。
「大事なことだから、ちゃんと決めときてーんだよ」
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