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するとカズエは、ふいにそっぽを向いてしまって、
「アキに任せてたら、いつになるかわかんないじゃない」
「え?」
「私はもう十分待ちくたびれたの。プロポーズしてくれたからには、後は超特急で行くから、あんたも腹括んなさいよね」
「――え?」
「式場の予約から新婚旅行の段取り、新居の手配まで全部やっとくから、アキは体だけ空けといてくれればいいから」
怒濤のように告げるカズエは、超特急というよりカタパルト射出だ。
目の回る急展開。
「……カズ」
思わず呆然としてしまう秋哉の胸に、カズエがギュッと荷物を押しつけてきた。
そして、早く行けとばかりに、ポイと外に放り出されてしまう。
バタンと無情にドアが閉められて、
「ちょっ待てよカズ!」
玄関を振り返って名前を呼ぶ秋哉の耳に、
「アキからのプロポーズ、すごい嬉しかったんだからね」
ふと聞こえた、カズエの声。
ドア越しに息を飲んで、秋哉はドアに耳をくっつける。
カズエは続けて、
「だからこれ、私なりにはしゃいでるんだからね。ちゃんと気づいてよ」
照れくさそうな声で言った。
それから、
「大好きだよアキ、これからもよろしくね」
――了――
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