IF 鈴音が兄弟たちと同じ高校だったら

2/45
前へ
/172ページ
次へ
驚いて足を止める鈴音の足元に、ポンポンと一個のサッカーボールが転がっていく。 そして、 「すんませんでした、会長ー」 焦った様子で駆けてくる男子生徒。 どうやらボールが鈴音にぶつかりそうになったのを、目の前に飛び込んできたこの人が助けてくれたらしい。 そして彼は、 『会長?』 見上げると、大きな背中の上にすっきりと短い黒髪が見えた。 教頭は、 「コラッ、気をつけなさい」 ボールを蹴った生徒を一喝して、 「すまないね生徒会長」 と彼のことを呼ぶ。 「いえ、間に合って良かったです」 生徒会長は、教頭にも負けない落ち着いた態度でしゃべっている。 それから鈴音にも、 「怪我はない?」 と振り返ってくれたが、鈴音は思わず見惚れてしまった。 彼は、これまで鈴音が会ったのことないくらいのイケメン。 爽やかな短髪に、映画俳優みたいに整った顔。 『こんな人、本当に存在するんだ』 驚きの方が先に出てしまう。 するとポーッとする鈴音に、教頭はコホンとひとつ咳払いをして、 「ちょうどいいから紹介しておこう。彼女は二学期から一年生に転校してくる雨山鈴音さんだ。 雨山さん、彼はこの学校の生徒会長、三年の来生春一くん――」 そこまで聞いたところで鈴音の目の前が真っ暗になった。 「うわっ!」 イケメンがびっくり顔をしたが、その時にはもう、鈴音は意識を手放していた。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加