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9月初めの始業式の日。
転校初日の鈴音は、ドキドキしながら担任に名前が呼ばれるのを待っていた。
廊下に立っている鈴音を追い越して教室に入っていく生徒たちが、
『誰?』
という顔で鈴音をジロジロ見ていくのが、とても恥ずかしい。
早く呼んでもらえないかと小さくなっていると、それまでの廊下の慌ただしい気配が、いきなり静まりかえった。
顔をあげると、男子生徒がひとり、端を曲がってこちらに向かって歩いてくる。
もう遅刻寸前という時間なのに、慌てる様子もなく、ズルペタと気だるそうな態度。
しかし、注目を集めたのはその態度ではない。
男子なのに長い、しかも真っ赤な髪色をしていて、ひょろりと背が高い。
鈴音はつい、
『わあ、不良の人だ』
と緊張した。
歩いているだけで、ものすごい存在感を放つ派手な男。
鈴音とは住んでいる世界が違うと、ひと目でわかる。
だが近づいてきた彼は、鈴音が考えていた『不良』とは一線を画していて、着崩してだらしないはずの制服を、まるでスタイリストがついているように格好よく着こなしている。
ものすごくスタイルがいいせいだ。
有り体にいえば、とても格好いい。
まるでモデルの人みたいで、鈴音はつい口を開きっぱなしにして見つめてしまった。
都会の学校ってすごい。
イケメンとの遭遇率が高すぎる。
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