IF 鈴音が兄弟たちと同じ高校だったら

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「やなヤツ、やなヤツ、やなヤツ……」 授業を受けている間中、鈴音の脳裏をしめたのは、そんな感情だった。 思い出せば出すほど腹が立ってくる。 なんだって、初対面の男にあんなイヤミったらしいことを言われなくてはならないのだろう。 「てめぇか、春に色目つかったっていう転校生は」 さっぱり意味がわからないし、それに、 「誰のことよ、ハルって」 鈴音はそんなヤツは知らない。 色目を使っただなんて、いいがかりも良いところだ。 どうにも怒りが治まらないが、怒るタイミングを逃してしまうのは鈴音の悪いクセだ。 あの時すぐに、言い返していれば良かった。 授業を挟んだ今さら文句を言っても、 「はぁ? なんのことだ」 なんて言われたら、今度はこっちが惨めになる。 そしてくだんの男は、授業が始まるやいなや机に突っ伏して、ずっと眠りっぱなし。 だからいつ振り返ってみても、目も合わせられない。 これで、思いっきりアッカンベェしてやる機会も失われた。 仕返しのタイミングを失って鈴音がモヤモヤしていると、あっという間に午前の授業も終わってしまった。 ただでさえ前の学校と授業のペースが違うのに、ほとんどノートも取っていない。 困った。 これもみんな、あのイヤミったらしい男のせい……。 と、タイミングを伺っていたのか、何人かの女子たちがお弁当を持って、鈴音の周りに集まってきた。 「えーと雨山さん? 良かったら一緒にお昼食べない」 願ったり叶ったりである。
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