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「会長、何かあったら三年教室においでですって?」
席に戻ると、女子たちは興奮して口々に言ってきた。
「聞いてたんだ」
「聞こえるわよ、そりゃあ」
別に内緒話をしていたわけではないから、聞き耳をたてていたクラスメートには全部筒抜けである。
さて、春一と顔見知りだったことをどう説明しようかと悩んでいると、
「じゃあやっぱり、生徒会長が保健室に連れ込んだ正体不明の女って、鈴音のことだったのね」
「へ?」
びっくりして思わず変な声が出る。
「生徒会長が私を保健室に連れ込んだ?」
連れていってもらったことは事実だが、どうもニュアンスが違う。
『連れ込んだ』なんて言われると、どうにもいかがわしい雰囲気が感じられて仕方がない。
でも絶対、そんなことはない。
女子たちはキャッキャと笑うと、
「そうよ。助けてもらったって、さっき言ってたじゃない」
「そうそう。そのことが一時噂になってたの」
「……え」
鈴音は口をポッカリ開けてしまった。
あの会長に助けられるということは、実は噂になるほど大変なことだったのか……。
するとみんなは、
「そんなパグが驚いたような顔しなくていいわよ。みんな鈴音みて、ひと目で大丈夫ってわかったんだから」
「……パグ」
『大丈夫』の意味がわからなくて首を傾げたが、それより例えられたパグ犬の方が引っかかる。
心なしか言葉にトゲを感じるではないか。
でも彼女たちは、
「ただのやっかみよ」
あっけらかんと言って、
「でもそれも、浮気した壬生さんの方が、言い逃れするために流した噂だったわけだしね」
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