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なんだか話がさっぱりわからない。
それに聞き覚えのない名前。
「壬生さん?」
みんながその名を呼ぶときに、ちょっとイヤな含みを感じてしまう。
本当は聞き返さない方がいいのかもしれないが、話の続きには、どうやら鈴音も絡んでいる。
聞かないわけにはいかないと耳を傾けると、
鈴音の興味をひけたことに気を良くした女子たちは、目をキラキラさせながら、
「うん、三年の壬生彩芽さん。壬生さんはね、生徒会の書記をやるような才女で、それに今年の春から会長とお付き合いしてた人よ。
同じ生徒会同士お似合いのふたりだって評判だったのに、この夏休みの間に別れちゃったの」
「それも壬生さんの浮気が原因でね」
「会長が浮気されたの?」
あれだけ人気者でイケメンの生徒会長なのに、浮気されるんだ、と鈴音は素直に驚いた。
私だったら、きっと毎日見惚れて、浮気なんて考えられないだろうな……。
ついさっき、間近で見てしまった故に、会長の整った顔を思い出してボーッとしてしまう。
すると女子たちは急に前のめりになってきて、小声で、
「しかも、浮気の相手は弟の来生夏樹なのよ」
「えっ!」
思わず大声を出してしまった鈴音は、
「シーッシーッ」
女の子たちにたしなめられる。
「……ご、ごめん」
結局全員が机の上で顔を寄せ合うような体勢になって、
「カラオケボックスで、ふたりがキスしてるとこ目撃されたんだって」
「え、私はヤってたって聞いたわよ」
「どっちでも同じよ。結局は来生夏樹とふたりきりでいたってことでしょう」
そうなると、動かぬ証拠というやつだ。
「そうそう」
「その浮気がバレて、当然、会長とはうまくいかなくなった。で、ふたりは別れることになった」
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