IF 鈴音が兄弟たちと同じ高校だったら

12/45
前へ
/172ページ
次へ
なんだか話がさっぱりわからない。 それに聞き覚えのない名前。 「壬生(みぶ)さん?」 みんながその名を呼ぶときに、ちょっとイヤな含みを感じてしまう。 本当は聞き返さない方がいいのかもしれないが、話の続きには、どうやら鈴音も絡んでいる。 聞かないわけにはいかないと耳を傾けると、 鈴音の興味をひけたことに気を良くした女子たちは、目をキラキラさせながら、 「うん、三年の壬生彩芽さん。壬生さんはね、生徒会の書記をやるような才女で、それに今年の春から会長とお付き合いしてた人よ。 同じ生徒会同士お似合いのふたりだって評判だったのに、この夏休みの間に別れちゃったの」 「それも壬生さんの浮気が原因でね」 「会長が浮気されたの?」 あれだけ人気者でイケメンの生徒会長なのに、浮気されるんだ、と鈴音は素直に驚いた。 私だったら、きっと毎日見惚れて、浮気なんて考えられないだろうな……。 ついさっき、間近で見てしまった故に、会長の整った顔を思い出してボーッとしてしまう。 すると女子たちは急に前のめりになってきて、小声で、 「しかも、浮気の相手は弟の来生夏樹なのよ」 「えっ!」 思わず大声を出してしまった鈴音は、 「シーッシーッ」 女の子たちにたしなめられる。 「……ご、ごめん」 結局全員が机の上で顔を寄せ合うような体勢になって、 「カラオケボックスで、ふたりがキスしてるとこ目撃されたんだって」 「え、私はヤってたって聞いたわよ」 「どっちでも同じよ。結局は来生夏樹とふたりきりでいたってことでしょう」 そうなると、動かぬ証拠というやつだ。 「そうそう」 「その浮気がバレて、当然、会長とはうまくいかなくなった。で、ふたりは別れることになった」
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加