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皆が「更木先生はやっぱり変だ」とひそひそ話をしているその隙に、更木はえんじゅをあやす振りをしつつ背を向けた。
隠しながら、右手の親指と中指を合わせ、えんじゅの眉間に近づける。
そして、ゆでたまごのように無垢なひたいを、中指で軽くぴぃんと弾いた。
痛みに驚き顔をしかめるえんじゅに、更木は唇を近づけ小声で囁く。
「これは俺からの報復な。お前のせいで当面 、人間の世界で生活する羽目になっちまったんだからよ。
……っていっても覚えてねえか」
「ふぇ、ふぇ、ふええええん」
泣き出したえんじゅの声に俊介が振り向く。
「あー、やっぱり独身の男は子供あやすの下手ですね。
えんじゅちゃん、パパのところに戻っておいでー」
そして俊介は半泣きのえんじゅをしっかりと抱きかかえた。えんじゅは振り向いて更木を睨んだ後、俊介の胸の中に顔をうずめた。
更木はにやりと口角を上げ、皆に向けていう。
「じゃあ俺の用事は済んだから、そろそろおいとまするわ。
今度来る時は、えんじゅの分の土産も買ってくるからな。
だから、そいつが全部光ったら連絡くれや」
そう言ってテーブルの中央に飾られている回転木馬のオブジェをびしっと指差す。
「じゃあ皆の衆、またな」と言い残し、更木は颯爽と去っていった。
一同はそろって腑に落ちない顔になる。
「これが全部光るんだって、誰か言ったか?」「さぁ?」
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