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皆が席に腰を据える。シャンパンを注ぎ、声を合わせる。
「「「「乾杯!」」」」
「かんかーいっ!」
ひとりはオレンジジュースだけど気持ちは一丁前に四人の仲間入りだ。グラスがかち合う澄んだ祝福の音色が皆の心に響いて沁みた。
そのとき突然、卓上の回転木馬がひとりでに回転し始める。
「あれっ、どうしたんだ、僕はなにもしてないけど」
慌てふためく俊介と対照的にえんじゅはキャッキャキャッキャと大はしゃぎだ。
回転木馬はからからと笑い声のような軽快な音を立て速度を上げていく。そして部屋の壁に向かって光を発し始めた。皆の頭上に映し出された光は大きく広がってゆく。
その光には皆と共に過ごした俊介の過去が映し出されていた。
舞い踊る映像は、まるで思い出を記したアルバムのようだ。
「あーっ、これ、みんなで応援しに行った倫太郎の部活引退試合ね! 最後に優勝できたのよねぇ」
弥生はトロフィーを掲げる倫太郎の姿に歓喜の声を上げる。
「あの魚釣った時、俺こんな顔してたのかよ。我ながら愛想ねーな」
倫太郎は四人で旅行した湖畔で、大物のニジマスを釣り上げながらも一人だけ真顔を崩さない。素直じゃない自分の反応を目の当たりにして苦笑する。
「リレーはみんな、会心の疾走だったよな、文句なく全員が主役だ」
俊介は目前に迫るゴールテープと、その先に映る綾の姿をみてにかっと笑う。
「ふわぁ、あたしこのときの光景、一生忘れないなぁ」
綾はうっとりした表情で虹が一面に広がる空を懐かしむ。大地は花の色で溢れていた。
「あたしも、くるくるしたーい!」
えんじゅはどうしてもその回転木馬が欲しいみたいで泳ぐように手を伸ばす。もしも光に触れたら大事かもしれない。俊介はお転婆娘を抑えるのにひと苦労だ。
「えんじゅちゃんは、おっきくなったら波乱万丈な人生を送りそうだなぁ……誰に似たんだろ 、この暴れん坊の性格」
そんな小さな天使の最後の賭けは、誰も知ることはなかった。
まわる、まわる、回転木馬。
――みんなの胸の中に生きている、眩い思い出を映し出しながら。
まわれ、まわれ、回転木馬。
――あの日の、あの瞬間から動き始めた、
僕の――
あたしの――
俺の――
私の――
――煌めきに満ちた、新しい未来を祝福しながら。
希望の翼を背に携え、人生という果てしない大空を、力強く羽ばたいてゆくために――
FIN
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