プロローグ

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==天使症候群==  二年前、その疾患の病因が解明された。  ミトコンドリアにおける、特定の遺伝子変異が原因となる先天性疾患である。  幼少時は無症状だが、思春期から成長が遅れ、小柄で童顔となり、また齢を経るにつれ徐々に運動能力が低下する。  異常ミトコンドリアが崩壊しながら自家蛍光を発し、皮膚が緑黄色に輝く。疾患の進展に伴い、蛍光の範囲が広がってゆく。  治療法はなく、ほとんどの患者が二十歳代のうちに死亡する。  若くして輝きながら天に召される患者に対し、慰めとしてつけられた病名——それが「天使症候群」である。
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