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俊介は倫太郎の奇妙な発言の意図に疑問を抱き、その意図を確かめようとオブジェに手を伸ばした。
その瞬間、バチーン、と激しい音を立ててオブジェから眩い何かが飛び散った。
「痛ッ!」
火花か、稲妻か、その正体は一瞬のことでわからなかったが、指から腕を伝って全身へと激痛が走ったので、俊介は驚き派手に身を翻した。
「……やはり鳥海の言っていたことは本当だったか」
倫太郎はオブジェをまじまじと見つめ、指先で傘を弾いた。四頭の馬がくるくると回るだけだった。
一方の俊介はオブジェに触れた手のひらがずきずきと痛んでいる。険しい表情で倫太郎を睨みつけた。
「スタンガンかよ、それ。僕を騙したのか?」
「いや、鳥海自身が、俺からお前には渡すことはできないと言っていたんだ」
そういう松下の面持ちは妙に緊張していた。
「本当のところ、鳥海はお前にこれを渡したかったはずだ。こいつには鳥海の『想い』が詰まっているんだからな」
「綾の『想い』……だと? 何でお前にそんなことがわかるんだよ」
俊介は言い返すが、あからさまに動揺していた。倫太郎が俊介の知らない、綾の本心を理解しているかのような口ぶりだったからだ。
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