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 麗奈は熱に浮かされたようにワルツを踊る。  <館>に囚わればワルツはもう踊れないから。  昨年の夏、AIママが悲しそうに告げた。麗奈に限らず、彼女と同じ年頃の少年少女たちにはAIチップが埋め込まれ、サイボーグに生まれ変わるのだという。適正検査を受けたのち、彼らは様々なセクションへ送られていく。学業に進む者もいれば、仕事に就く者もいる。未来の決定権はメガロポリスAI<館>に委ねられており、自らの意思で逆らうことはできない。プライベートも管理される。なぜそうなったのかを、質問することはできなかった。なぜなら、それが暗黙のルールだからだ。 「拒否できないの?」  先ほど、麗奈はキッチンにいたAIママに質問をしたばかりである。外見が人間と変わらないアンドロイドはかすかにほほ笑んだ。「できないわ」そして、すぐに恐ろしい顔つきに変わった。「以前、ここから逃げ出した男の子と女の子がいたの。けれど、女の子はすぐに捕まって、臓器交換の刑を執行された」 「臓器交換?」 「そう。子宮、腎臓、左手首。高く売れるのよ」 「ひどい! 死んじゃう!」 「刑が執行されても、殺されるわけじゃないの。人工臓器が埋め込まれて、地球外惑星開拓用や深海開発仕様に改造されるだけだから。本物の臓器は病気で苦しむ人たちに提供されるし、あるいは<館>の学習プログラム槽に保存されることになってる。むしろ、罪が昇華されて役に立つということかしら」  AIママは淡々と説明を続けたが、それは麗奈にとって、不可解で得体の知れない内容だった。銃や剣で脅されるよりもはるかに恐ろしい罰だと思った。しかし、麗奈はそれを口にはしなかった。深い理由があったわけではない。本能的に感じただけだ。 「きょうの夕飯はなに?」  麗奈は調理台をのぞき込みながら話題を変えた。      
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