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毛布をかぶっていても、床暖房が稼働していても、寒さはかなりのものだった。
身体が震えている。
麗奈は毛布の中でしんしんと降る雪空を想像してみた。
本当は寒さのせいじゃない。
決行のときを考えて、緊張しているのだ。
外でかすかな物音して、麗奈は思わず身構えた。
起き上がり、カーテンをそっと開いた。
外は白いちめんの雪だった。黎明のかすかな青い光の中に、雪にまみれた二頭引きの黒い馬車と手綱を握る馭者が目についた。馭者は毛糸の帽子を目深にかぶり、その顔を窺がうことはできない。
麗奈は身を固くした。
雪が降ったのに、<館>の馬車が来たのだ。どういうことだろう。雪の魔力は嘘だったのか。
馬車から誰か降りてきた。
イオタロウだ。
麗奈はベッドの下から、あらかじめ用意しておいた背嚢をひっぱりだした。中身は非常食と非常服が詰まっている。
麗奈は窓に顔を寄せ、唇だけを動かした。
今、そっちへ行く。
イオタロウは頷いた。
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