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 先客がいた。  後部座席に体格のがっしりした男子生徒の岡崎サトル、その隣に小柄な女生徒が座っている。みんなからリンドウというニックネームで呼ばれていて、麗奈も校内で幾度か談笑したことがあった。 「オハヨー。遅かったね。捕まったのかと思って心配してたよ」  すぐにリンドウが嬉しそうに話しかけてきた。 「ごめん。AIママとトラブったから・・・」 「はあっ!行けえ!」  ふたりの会話は馭者の威勢のいい掛け声にかき消された。  震動が伝わると同時に馬車は一気に加速していき、雪原を疾駆し、葉のない森の中へ入った。  誰も言葉を発しなかった。  沈黙を破ったのは麗奈だった。 「イオタロウ、ひとつ訊いてもいい?」 「うん?」  イオタロウは前方に目を配っているのか、麗奈の方は見ずに頷いた。 「この馬車はどこから持ってきたの? 雪の魔力で迷子にならないの?」  馬車は、本来、<館>が所有している。 「<館>で待機していたのをパクってきた。見張り番がいたけど、始末してもらったよ」彼はそう言って馭者に顔を向けた。「昔、妹が<館>に臓器を抜かれて殺されたそうだよ。彼は復讐のためなら何でもするし、僕たちにも協力してくれるそうだ。雪の魔力に弱いのはAIだけさ。なぜ、弱いのかは聞かないでくれ、おれもわからないから。だけど、人間は平気なんだ」  イオタロウは笑ってみせた。 「ねえ、この世界の向こうには、本当に自由があるよね?」  麗奈はクロスボウを撫ぜた。戦闘をしなければ手に入らない自由とは何なのかよくわからなかったのだ。 「もちろんさ。AIの管理下に置かれる世界に自由なんかあるもんか」    麗奈は窓から空を見上げた。  雪は止み、雲の切れ間から陽が差していた。  森の中に積もった雪もそれほど深くなく、所々に黒土が露出している。花のように咲いていた小枝の雪がぽとぽとと落ちてくる。 「後方5時の方角、追跡車両!」  岡崎サトルが大声をあげた。  AIママが稼働停止した時点で警報が鳴ったから、<館>の追跡は当然だった。逃亡は容易でないだろう。  麗奈はクロスボウを握りしめた。  
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