11人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「うーん…美味しい」
あっくんがコーヒーを一口飲んで言った。砂糖もミルクも入れていない。
少し迷ってあたしもブラックのまま口を付けた。苦い。やっぱりコーヒーは苦手だな。
「もしかして、コーヒー嫌いだった?」
「あ………そんなこと…ないよ…」
首を振りながら答える。一言一言気を付けて。
「美月ちゃんて、無口だよね?」
「えっと………ごめん、なさい…」
「いや、怒ってるとかじゃなくてさ……」
あっくんは困ったように頭を掻く。あたし、何か失敗しちゃったのかな?
「何かあるならちゃんと言って」
「えっ?」
「この店もさ、僕のお気に入りだから連れてきちゃったけど、もしコーヒー嫌いだったらジュースとかハーブティもあるから」
「あの……あたし…」
言っていいのかどうか迷っていると、あっくんが笑って「何?」と聞いてくれた。とても優しい笑顔。あたしは思い切って口を開く。
「コーヒー、苦手なの……ごめんなさい…」
「謝るのは僕の方だよ!」
あたしがぺこりと頭を下げると、あっくんは少し大げさに驚いてメニューを取ってくれた。
「確認もしないでコーヒー勧めてごめん。好きなの頼んで」
「じゃあ……りんごジュース…」
紅茶やハーブティもあったけど、りんごジュースにした。その方がマシな気がしたから。
「ねえ美月ちゃん…」
「はい…」
りんごジュースを頼んだ後、あっくんは真面目な顔をしてあたしを見る。あたしはまた何か間違えたのか、また嫌われるのかと心配になった。
「もっと美月ちゃんの思ってる事、話して欲しいな」
「えっ?」
戸惑うあたしを、あっくんは優しい目でじっと見る。その優しい目に後押しされるように、あたしは思っていたことを話し出す。
「あのね……今日の映画、面白かったけど…」
「うん」
「本当は、ホラー映画が観たかったの」
「意外!ホラー好きなの?」
あっくんはまた大げさに驚いて聞いてくれた。あたしは嬉しくて、堅く閉ざしていた口が少し緩むのを感じた。
「うん!昔からよく観てた!来月公開の巨大鮫シリーズの新作も観たいなって思ってて…」
「いいね。じゃあ一緒に観に行こうか?」
「ありがとう!嬉しい!」
最初のコメントを投稿しよう!