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「うーん…美味しい」  あっくんがコーヒーを一口飲んで言った。砂糖もミルクも入れていない。  少し迷ってあたしもブラックのまま口を付けた。苦い。やっぱりコーヒーは苦手だな。 「もしかして、コーヒー嫌いだった?」 「あ………そんなこと…ないよ…」  首を振りながら答える。一言一言気を付けて。 「美月ちゃんて、無口だよね?」 「えっと………ごめん、なさい…」 「いや、怒ってるとかじゃなくてさ……」  あっくんは困ったように頭を掻く。あたし、何か失敗しちゃったのかな? 「何かあるならちゃんと言って」 「えっ?」 「この店もさ、僕のお気に入りだから連れてきちゃったけど、もしコーヒー嫌いだったらジュースとかハーブティもあるから」 「あの……あたし…」  言っていいのかどうか迷っていると、あっくんが笑って「何?」と聞いてくれた。とても優しい笑顔。あたしは思い切って口を開く。 「コーヒー、苦手なの……ごめんなさい…」 「謝るのは僕の方だよ!」  あたしがぺこりと頭を下げると、あっくんは少し大げさに驚いてメニューを取ってくれた。 「確認もしないでコーヒー勧めてごめん。好きなの頼んで」 「じゃあ……りんごジュース…」  紅茶やハーブティもあったけど、りんごジュースにした。その方がマシな気がしたから。 「ねえ美月ちゃん…」 「はい…」  りんごジュースを頼んだ後、あっくんは真面目な顔をしてあたしを見る。あたしはまた何か間違えたのか、また嫌われるのかと心配になった。 「もっと美月ちゃんの思ってる事、話して欲しいな」 「えっ?」  戸惑うあたしを、あっくんは優しい目でじっと見る。その優しい目に後押しされるように、あたしは思っていたことを話し出す。 「あのね……今日の映画、面白かったけど…」 「うん」 「本当は、ホラー映画が観たかったの」 「意外!ホラー好きなの?」  あっくんはまた大げさに驚いて聞いてくれた。あたしは嬉しくて、堅く閉ざしていた口が少し緩むのを感じた。 「うん!昔からよく観てた!来月公開の巨大鮫シリーズの新作も観たいなって思ってて…」 「いいね。じゃあ一緒に観に行こうか?」 「ありがとう!嬉しい!」
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