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俺の秘密
思い込みという現象は、人間の脳にどう関わっているのでしょうか?
言えない秘密を抱えた少年のおはなし。
◆◆◆◆◆
あれ、ここはどこだ? 俺は、冴えない最弱なブサメンのはずだ。もしかして今流行の異世界転生というやつだろうか? 記憶があいまいだが、俺は異世界転生の後に、サクセスストーリーを歩むことになったらしい。
どうやら俺は王女の許嫁になったらしい。俺が異世界転生をして、許嫁になるまでの俺の恋物語について聞いてもらおうか。なんだか頭がくらくらするな……。
「この国の時期国王候補として、ダークを任命する」
俺はこの瞬間から次期国王となった。
「それ故、国王の長女である王女ルイザ姫の許嫁とする」
そう、それはこの国の王女ルイザの婚約者、将来の結婚相手と決定された瞬間でもあった。
夢のような幸せだと思う。
でも、俺には秘密があって、結婚はできないだろう……。
好きになってもらえないだろう……。
一般的に幸せな話ではないか? 逆玉の輿ではないか?
いやいや、この王女相当クセモノなのだ。
冷酷非道、滅多に笑うことのないサディスティックな王女は、気は強く、口は悪い。女というよりは、男と言ったほうがいい。ツンデレの「デレ」がない王女。この人と結婚したいなんていう男は、あまりいないと思う。
見た目は長いストレートヘアーで冷たい目をした美人だとは思うが……みんな罰ゲームに当選したかのごとく……
「ご愁傷様」
婚約発表があってから、会う友達、会う友達に言われるセリフだ。
「おめでとう」ではない。
ここの戦士はたいてい、この国の兵士として働いているので
王女のことをよく知っているのだ。
気に入らない部下を殺す。兵士が死のうともなんとも思わない王女。
王女は幼少のころから剣術にたけていた。
その王女に同年代で勝利できる若手を探していた。
王女は自分より強い相手が欲しかったのだ。強さに飢えた王女。
そこで一般国民まで幅広く募集をかけたのだった。
その武術大会で、優勝したのが俺だったのだ。
しかしながら、俺には誰にも知られていない秘密がある。それは、ほんとうは小太りのブサメンで弱い男だということ。
それはあるできごとがきっかけで、1年間限定でイケメンに変身できるという魔法をかけられたのだ。
昨年の王女の誕生日パーティーのときだっただろうか……。
俺はあの日、はじめて恋を知った。
王女が美しすぎてまぶしすぎたのだ。
太陽のごとく、俺は目を開けていることができないくらいだった。王女の美しさに衝撃を受けた俺は一般人。王女と話すことも近づくこともできない。雲の上の存在だった。しかも、弱いブサメンだ。金持ちでも貴族でもない。王女に相手にされる要素はない。
帰り道、偶然瀕死の妖精を助けた。
その妖精は美しい女性だった。
優しそうな妖精は、ケガで動けなくなっていた。
そこで俺は叔父がやっている病院に運んで治療してもらった。
一見、普通の人間のように見えるので、叔父さんも妖精だとは気づかなかった。その時は俺だって妖精だとは気づかなかった。それくらい人間そっくりなんだ。
妖精は聞いてきた。何が望みなのかって。
俺はひとめぼれした王女と仲良くなりたいと望んだ。
すると妖精は――
「恩返しに1年限定であなたをイケメン男子にします。そして、1年限定で剣術武術ではだれにも負けない強い力を与えます」
という魔法をかけたのだ。
そして妖精は、ヘタレの俺が王女に近づけるチャンスを与えてくれたのだ。
その後、俺は王女の剣術相手の募集をみて、大会に出場したのだ。
でも、本当は剣術の腕は中の下、程度だ。
しかし、魔法のおかげなのか、俺の腕前はぶっちぎりに強くなっていた。
努力なしの最強なのだった。
もしかしたら俺は、イケメンになったおかげで、姫に気に入られたのかもしれない。でも……魔法が解けたら相手にされないことはわかっている……。
今の幸せだけを楽しんで、ドロンすればいいのか?
急にブサメンで弱い男に戻っていたら絶対ふられるだろ? 普通。
王女は強い男が好きなのだから。なんで1年限定? どうせなら永遠に最強でイケメンになれる魔法をかけてほしかった。
俺は優勝してから、この国の若手戦士育成所のトップ戦士集団に所属した。
魔法をかけられてからというもの、大会では毎回優勝していて向かうところ敵なしだった。
いつのまにか俺は、王女の御学友(剣術友)になっていた。いつもルイザの傍にいたように思う。最近では、休日は王女のボディーガードのアルバイトまでやっている。ルイザはスキを見て俺を倒そうと必死に修行に明け暮れている。王女は私が倒すまではここを辞めるな、といつも口癖のように言っている。勝ち逃げは許せないらしい。彼女の高い高いプライドが許さないのだろう。エベレスト並みに高いプライドが俺の強さによってへし折られたのだから。向かうところ敵なしだったルイザが負けてしまったのだから……。でも、俺は魔法で強くなったのだから、絶対に負けることはなかった。要するに、最強なのだ。俺の望みはかなった。
この短期間にどれだけ一緒の時間を過ごしてきたのだろう。
そして、結婚なんてしたらどれだけ一生一緒なのだろうか?
めまいと吐き気がするくらい長い話だ。
ルイザは、国王である父親しかいない。母親は表向き死んだことになっていたが、本当は部下と駆け落ちしたらしい。国王の妻が駆け落ちなんて公表できず、死んだことになったらしい。このことを知っているのはごく一部の人間だけだ。俺は婚約者になってから、ルイザからその話を聞いた。ルイザは、国王の任務が忙しく寂しかったのだろう。小さいころから剣が友達だった。それだけは、ルイザに同情をする。
しかし、いつの間にかルイザは自分のやり場のなさを兵士や部下に当たるようになっていったらしい。そして、気に入らないものは処刑することをなんとも思わない冷血人間になっていったのだ。
俺は、ここへきてはじめてその事実を知って、彼女に暖かい心を戻してほしいと願うようになった。
彼女の冷めきった心を溶かすことは難しいということは、周りの国の戦士たちに聞いていた。彼女の冷酷非道な行いは表向き報道されることはない。国王は、たくさんの秘密を抱えているのだ。娘のこと、妻のこと……
それは、トップに立つものだからこそ表沙汰にできない秘密なのかもしれない。
婚約する前に国王が直々に俺に話をしてきた。
「娘の心を溶かしてほしい。一人娘ゆえ甘やかしすぎた。唯一、ルイザは君にだけは心を開いている。」
本当は、超弱いブサメンとは言えず……。イケメンになった俺は「任せてください」と答えてしまった。
一年後が怖い。みんなを騙していた俺、まずいよな? 俺、処刑されるのではないのか? 少しずつだが不安になってきた。
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