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Travelator.
──午後8時。夜食を求めてビル街を彷徨く。…カラスが1匹、紫黒の空へと消えて行った。
…遠くから何かが聞こえて来る。…点滅する赤い光を見て、オレはその場に身を隠した。
「…おっと。……。」
ピコピコ音を出しながら、スケートのような足で滑走するロボットが2機…向こうの通りへと消えて行った。
…ふぅ、もう嗅ぎ付けて来たか。ま、気付かれずに動くのは無理だと諦めてるけどな。
「…ぅし!」
──コンビニを見付け、今正に入ろうとしていた客を盾のようにしてオレも侵入し、商品の入ったケースを叩き壊す。
「両手を上げて壁に張り付きな。
オレは今日の夕食が手に入れば良いんだ。」
「ひっ…トラベレイター!?」
オレが握っている凶器──ブレスレットを見た男が慌てて言う通りにする。
保存食をバッグに詰め、自動ドアの前に立つ。…俺の端末からは“ドアを閉めろ”と言う電波が出ていて、オレ一人では開けられない。だから、客と手を繋いで店を出る。
「良し。もう良いぞ。驚かせて悪かったな。」
──警報の鳴り響く店を出て、直ぐ走る。
──直ぐにピコピコ音が後ろから聞こえて来た。
「はははははっ!!」
【止まれ、トラべレイター!】
逃走するオレの行く手を“パトロボ”が塞ぐ。
「…トラべレイター?」
違う。オレはそんな名前じゃない。
「ぉおおぅっ!!!」
パトロボを踏み台にジャンプし、尚もオレを捕まえようと伸びる触手を辛うじて避ける。
「…ははっ!♪」
また学習したか!
「はぁあっ!」
触手を掴んでパトロボを投げ飛ばす。…それを避けて追って来る2機。…ったくしつこいなっ!
…はっ、こう言う時はアレだな。
「はっ、はぁ…はっはっ…!
…うおおぉおおおっ!!」
息を切らして走り、見付けたソレに勢い良くぶつかる。
【トラべレイター、久遠寺 未来。自動販売機の破壊、未遂を確認。これで、お前の償っていない罪状は36となった。】
「うるっせぇ!!はっ!!」
キュイキュイと言うような音がする。奴らが目を動かしている時の音だ。
俺が蹴り壊した、自販機用の固定器具が罪に値するかを考えているのだろう。
「罪なら自分で償うさっ!テメェらに決められるもんじゃねぇ!よっ!!」
自販機の後ろに回り、パトロボ2体を狙ってぶつかる!!
──虫のような関節を動かし、自販機を退かそうともがくパトロボ達。
「…ふぅ。ま、こんなもんか。ははっ♪」
──勝利の美酒佳肴と行きたいところだが、この自販機を使うのは止めた方が良い。(それにオレは16だ。)
「…ふっ。」
──何時まで、こんな生活が続くんだろうなぁ。
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