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「ねぇ起きてよ。」
…耳元で声がして、本能的に目が覚める。
「うわっ!?…何だお前!?」
グレーのパーカーを着た細身の…高校生か?
…どうやら昨日寝床に選んだ路地裏で間違いないようだ。外はまだ暗い。
「何って……トラべレイター、って言えば分かるんじゃない?」
「…お前が、トラべレイター?」
「君も、でしょう?」
「…何だお前?何でオレを知ってる?何故ここに来た…?」
「うん、話が早い。調べたんだ、君のこと。」
「調べた…!?」
「…僕、喧嘩とか苦手だからさ。出来れば話を聞いて貰えると助かるんだけど…。」
「…ぁあ。」
殴り倒すのは話を聞いてからでも良いだろう。
「まずは情報の確認から良いかな?
君は久遠寺 未来、私立鎖帷子高校2年生。16歳。少し前から“トラべレイター”と呼ばれるようになり、警察から追われてホームレスに成り果てている。」
「…おう、正解だ。」
「…もしかして怒った?」
「…もしかしてお前はオレを怒らせようとしてるのか?」
「…ごめん、今のは書いてあるのを読んだだけで、他意は無くて…。」
「…ブレスレット。お前、トラべレイターなのに没収されてないのか…!?」
ブレスレットは通信端末だ。電話やメール、インターネットなども使えるが、“トラベレイター”と呼ばれる人間の端末はそれらの機能を封印されてしまう。
「機能は没収されたよ?だから、自分でそれを補った。」
「…。」
思わず唾を飲む。…その手があったか。こいつはオレみたいに逃げ回らなくても生活が出来るんだ。(よく見れば風呂にも入ってそうな見た目をしている)
「…要件は何だ?」
「同じトラべレイター同士、手を組めないかって思って。」
「…それは心強い。けど、理由も無く信用は出来ないな。」
「んー…理由って言っても、“トラべレイターについて知りたい”ってことだけなんだよね。」
「はっ♪面白いじゃんか。」
手を差し出す。
「…?これって信用して貰えたってことで良い?」
「さあな。信用するかは兎も角、協力はする。それだけは約束出来る。」
「ん、分かった。よろしく。
…で、ここは安全とは言えないと思うから、早速移動したいんだけど良いかな?」
「…ぁあ。」
荷物に目をやる。と言っても寝袋に食料なんかを詰めたカバンが入ってるだけだ。
「…ん、ここよりは安全だと思う。その寝袋も持ってきた方が良いと思う。」
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