Travelator.

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──謎の高校生に連れられてやって来たのは地下水路だった。 「…おいおい大丈夫かよ。こんなとこ直ぐ警察に見付かるんじゃねーのか?」 「大丈夫、細工がしてあるから。出入りするところさえ見られなければこの場所はバレない。」 「…どうなってんだ…?」 この時代、死刑手配犯(トラべレイター)が巣食いそうな場所なんて監視されていそうなものだが。何せ、人間と違ってAIは24時間見張れるんだから。 「僕、ハッキングとか得意だから。監視データを偽装して警察のAIに送り続けてる。」 「…それ、ハッキングが得意とか言うレベルなのか?」 よく知らないから、説明されても分からんと思うが。 「…ふぅ。逃げなくて良いのは気が楽だな。」 一気に肩の力が抜ける。気怠さと言うか、痛みにも似た感覚。…ずっと力みっぱなしだったのかオレ。 …それに比べてこいつは呑気なものだ。同じトラべレイターとは思えない。 「…あ。そういや、トラべレイターについて知りたいってことで手を組むんだったよな…?」 オレ、何にも知らないぞ…? 「良いよ、簡単に分かるくらいなら手を組んだりしてない。」 「ま、そう言うもんか。」 「質問はもう済んだ?」 「…まぁな。」 ホッとしたからか、早くも眠気すら感じて来る。…睡眠ガスとか流れてないよな?(流れてたらこいつも危ないか。) 「じゃあ、軽く自己紹介。僕はミチ。針金(ハリガネ) ミチ。」 「…変わった名前だな。」 「本名だよ。どうせ警察にはバレてるし。」 「バレてるのかよ…。」 「んー、データ改竄はしたんだけどね。何故か書き直されてたから諦めた。こっちの手口がバレたら逆ハックとか、ハッキング対策を強化される可能性があるから。」 「お、おう…?」 「…着いたよ。ここが僕達、トラべレイターの基地だ。」 「…ぼくたち?」 「おう、無事帰って来たか。」 「…エンジさん。頻繁に出掛けないでって言ってるんだけど。」 「悪い悪い♪その代わり食料は多めに確保出来たと思うから許してくれよ。」 …オレや針金 ミチとは随分歳の離れた風貌。 エンジと呼ばれた男は、動きやすそうな半ズボンにリュックサック、アロハシャツ、屋内だと言うのに帽子まで被って…何とも(とても逃亡中の)憎めない(凶悪犯とは思えない)空気を醸し出していた。
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